臨床スポーツ医学,13(11):1265, 1996
中国スポーツ推拿療法とは?
大阪府立大学総合科学部
自然環境科学講座健康科学系
李 強、清水教永、松浦義昌
中国スポーツ推拿療法(Traditional Chinese Sports Massage Therapy)とは、中国伝統医学(Traditional Chinese Medicine:TCM)とスポーツ医学の理論に基づき、スポーツの過程において、スポーツ傷害とこれに関する整形外科的疾患を罹患する患者の体表の経絡・T穴や、患部にある筋肉・靭帯・関節などに、種々な推拿手技を用いて、その疾病を治療・予防する、一種の手技療法である。
中国のスポ−ツは中華人民共和国成立以前においては、世界の水準からみれば見るべきものは殆どなかったが、国家成立と同時に学校体育や競技スポ−ツに力を注いだ。1958年、成都体育大学では、急速的な学校体育及びスポ−ツ普及のニ−ズに応えるため、「按摩(推拿)」を重点的学習内容とし、「骨傷科医速成コ−ス」を設け、プロスポ−ツチ−ムに配属されるスポ−ツ専門医を養成した。さらに、その翌年、国家体育委員会は成都体育大学に、運動保健学部を設立し、4年制のスポ−ツ専門医を本格的に養成し始めてきた。その後、中国各地の体育大学は、推拿(按摩)をスポ−ツ保健専攻の必修科目の1つとして取り入れていった。スポ−ツ推拿療法は、この頃から正式的な市民権を与えられたといわれている。
この十年間に中国スポ−ツ界が急成長してきた原因を挙げると、枚挙に遑がないが、スポ−ツ推拿療法がその役割を担う重要な要素であったことは言うまでもない。中国体育委員会が成都体育大学に骨傷科スポ−ツ医学研究所、北京医科大学にスポ−ツ医学研究所を設置し、中国伝統医学と西洋医学の両面から、本格的にスポ−ツ医学を研究しつつある。そして、スポ−ツ推拿が、これらの研究の重要な課題の一つであることはまさにその実証であるといえよう。一方、陸上競技で高名な「馬軍団」の馬監督がスポ−ツ推拿の大家であり、彼の手技はスポ−ツ専門医の水準をはるかにしのぐものである。特に馬監督は、推拿により生体内機能の活性化を図ることに集中した。その結果、馬監督が率いる陸上チ−ムは世界のトップレベルに成長したのである。そして、選手は衣食住の全体にわたる自主的な健康管理を可能としたのである。
中国スポーツ推拿療法の特徴は、理論及び臨床のいずれかの側面にせよ、その理論の整合性、手技の多様性、操作の安全性、臨床上の即効性などが挙げられる。従って、スポーツマッサージの分野では、中国スポーツ推拿療法がその中核に位置付けられていることに関しては異存はなかろう。
今後、中国スポ−ツ推拿療法は、スポ−ツマッサ−ジの分野において中心的役割を担うことになるといえよう。
参考文献
1.李 強、清水教永:スポーツ医学領域における中国スポーツ推拿療法。たにぐち書店,東京,1996年.